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2025.07.10

数寄屋造りの魅力|日本の美と職人技が息づく建築様式

数寄屋(すきや)とは

「数寄(すき)」とは、和歌・茶の湯・生け花などの風流を楽しむ心のことを指します。
つまり「数寄屋」とは、「好みに任せて作った家」という意味です。

日本の伝統建築の中でも、数寄屋造りは“侘び・寂び”の美意識を体現する建築様式として知られています。
華美ではなく、素材の持ち味と空間の静けさを大切にした住まいです。


数寄屋造りの起源と特徴

数寄屋造りが生まれたのは、安土桃山時代のことです。
当時、茶の湯の文化が広まり、茶室建築を原型として発展していきました。

建材は質素でありながらも自由で洗練されています。
柱や床板には竹や杉丸太、床柱や床框には紫檀(したん)などの銘木、
板材には桑の一枚板など、自然素材の美しさを最大限に生かした構成が特徴です。

写真のように一見素朴に見える数寄屋造りですが、
実際には高度な技術が必要とされるため、
現在この建築を正確に手掛けられる工務店は非常に限られています。


数寄屋造りに見られる職人の技

数寄屋建築では、素材だけでなく「職人の手仕事」も大きな魅力です。
壁は白壁を使わず、原則として土壁仕上げ
そのため、伝統的な左官技術が欠かせません。

また、組子障子や繊細な木組みなど、木工職人の緻密な技術も光ります。
これらの要素が調和することで、数寄屋造り特有の「静けさ」と「温かみ」が生まれます。


現代における数寄屋造りの価値

現在では、数寄屋造りは非常に高価で、
高度な技術を必要とする高級建築の代名詞となっています。
そのため、一般住宅で見られる機会は少なくなっていますが、
料亭や旅館などでは、今もその美しさを体感することができます。

しかし、住宅の一部に数寄屋の要素を取り入れるだけでも、
空間に落ち着きと上質な雰囲気が生まれます。
たとえば、床の間・和室の一角・玄関の意匠などに、
竹や土壁、組子などの技法を取り入れることで、
日常の中に日本の伝統美を感じられる空間をつくることができます。


まとめ

数寄屋造りは、見た目の豪華さではなく、素材の質感や職人の手仕事によって成り立つ「静かな贅沢」の建築様式です。
日本人のDNAに刻まれた“和の美”を感じさせる空間は、心を穏やかに整えてくれます。

伊沢工務店では、60年以上にわたる大工の技術と経験を活かし、
数寄屋建築の要素を現代住宅に調和させるご提案を行っています。
本格的な和の空間づくりにご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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